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HOBBY HP (A)
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WE274B 刻印

回路設計でいくら追い込んでも、素材の差が残ってしまう。

  電源回路を追い込んでいく  
 

電源回路をいろいろと設計して評価する。定電圧、定電流、シャント、チョークやらコンデンサやらダイードやらも登場して賑やかなことこの上ない。回路的にいろいろと考えてみて、また測定したり評価してみるのだが、各方式による差と特定の素子による差が交錯して、悩むことしきりである。セレンで整流するとダイードよりよかったりすると、スイチング雑音の点で有利だとか、整流素子にはある程度のインピーダンスの高さがあったほうが有利なのかという仮説を立てたりする。それではということで内部抵抗の低い水銀蒸気整流管を使用してみると、これはこれで好結果を出したりする。高内部抵抗仮説がゆらいだと思いきや、高内部抵抗管のWE274Bを試してみると、これがまた素晴らしい。高額であるということ、ウエスタンの伝説がプラシーボ効果として働いているわけではなく、本当によい。かくして回路方式優劣仮説の検証は、素材の個体差を含めた良否と交錯して、音の迷宮は、ますます深まり、やはり名球は存在するのだろうかということになってしまう。回路方式でやることをやったら、あとは素材にすべてを委ねるしかないのだろうかしら。

 
 
 
  謎の整流管  
  固体差や素材の差を回路技術や方式でなんとかできないののかと四苦八苦する。この範囲であれば、シミュレータやら測定器で調べたり追い込める。やりつくしてくたびれ果てたところで、この真空管を整流回路に挿すと、もう溜息しか出ない。この真空管をモデリングすることはできない。あらゆる回路設計の苦労が名品の前で色あせてしまう。金持ちには敵わないのか?という諦観とともに、やがてはこの真空管を作りおおせた人たちとその時代に静かで深い感動と尊敬を覚えるようになる。現代では失われてしまった、古の匠とその情熱が、フィラメントの灯とともに現代に蘇るのである。真空管には寿命がある。熱電子を放出しながらエミッションが減退していく。60年以上も生き続けているこの真空管もまたその命を終える日が来る。  

ありがたきかな

 
 
やがては消えてゆく運命を儚むよりも、今この音を聴ける至福に感謝すべきだろう。しかしおそらくは、私がこの世を去ったあとでもこの真空管は、世界のどこかで熱電子を放出し続けているに相違ない。所蔵している人は大事に使いましょう。そして他の人にも聴かせてあげましょう。でも使わないのに買占めたりはやめましょう。高すぎたら買うのはやめて、誰かのところに拝聴に参りましょう。それによって人の輪がいちだんと大きく広がってまいります。
 
 
 
  フィールド型のスピーカーで後ろにトランスと真空管を背負っているものがありますが、このような球を背負われてたら敵いません。逆に互換の球をさしてもそのスピーカー本来の音にならないわけですから、これもまた奥の深い世界であります。  
 
 
 
5/21/2006