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大星夜電源設計PS2型
物量を投入した無駄三昧の電源の設計
大星夜電源 |
改造に改造を重ねてきた2A3PPアンプは、はらわたが外に飛び出したような状態になってしまったので、せめて出力管のB電源だけでも一つのシャーシーに組み上げようと、電源部を製作することにした。回路は、至って単純明快でだれにでも設計できるが、だれも作ろうとしない、実に馬鹿馬鹿しい回路である。回路は、5AR4の両波整流であり、2本のソケットに450Vと550Vを接続してあり、差し替えることによって、450Vと550Vを切り替えて整流できるようようにしてある。容量は300mAある。 |
整流後は、4H300mAのチョーク・インプットである。2段目は、キャパシターなしで同じチョーク続くが、これは、将来グランドがわに移動するかもしれない。3段、4段目も同じチョークである。初段のキャパシタC1は、6uのオイル・コンデンサだが、本当は4uにしたいのだが実装上の制約で、やむなく6uにしてある。二段目C2もオイルの15uである。三段目以降は、C3からC53迄は、SOLENのフィルムである。最集段C6L/C6Rは、東一の47uのフィルムである。C51からC53は、3本をパラにしてあるが、これは、音決め過程でよく調整するので、今はこの状態である。 |
この電源はモノラル用であるが、実験過程で、2チャンネル分の電源が必要になることがあるので、7段目は、5Hのチョークを並列にしてあり、最終段は、1Kの抵抗で電圧をドロップさせてあり、2チャンネルで使用した場合でもチャンネンル間の影響が少なくなるようにしてある。 |
定電流特性型電源 |
できることならば、プレート電圧が300Vが必要ならば、30,000V位の高圧から、電圧を落として使用したいところである。こうすると、アンプ本体部の電圧が300Vあっても、電流ループのシリーズでは、アンプ部分は1/100であるから電源の影響を無視できる定電流特性が得られる。しかしながらそこまではやれないので、今回は550Vからまあ半分近くまで落として使用できるような構成にしておく。以前トランジスタとの混成で211のプレート電圧用に1000Vの安定化回路の実験をみたが、高圧の回路での混成は音質的にも回路的にも私の技術力では、手に負えなかったので物量で解決することにした。物量は投入してあるが、資金を投入したという訳ではない。長くオーディオをやっていると部品はゴロゴロあり、新しく購入したものは、シャーシーとキャパシタ数本程度である。パイ型フィルターのLとCの定数が無茶苦茶なのは、手持ちの部品の都合による。新規に設計するのであれば、40Hくらいの大きなチョークを巻きたいところだ。 |
キャパシタの選択
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キャパシタの選択はとても悩ましいが、今回はオイルとフィルムの混成にした。SOLENを使用している理由は値段が安いからである。カップリングに要求されるキャパシタやネットワークに使用するキャパシタ(交流を通過させる特性)と電源のフィルタリング(充放電)に要求されるキャパシタの性格は、やはり違うようである。WEのペーパー・コンデンサと最新のメタライズド・ポリプロピレン・フィルム・コンデンサは、まだ試していないので是非試して見たいところだ。電解はクソ力を出すことができるが、濁ったドロドロの音になるので困ってしまう。困り球と問題トランスを使用して薄く細い音になってどうしようもなくなったときは、電解が威力を発揮し見事なバランスを実現する。今回のアンプ本体は、結構音が立って、速く、太いので電源は大吟醸でいくことにした。 |
無駄をする場所
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今日主流のオーディオの方向性は、大出力アンプ+低能率高性能スピーカーというものである。小型の箱にコーン紙を重くして最低共振周波数を低くしたユニットを使用し、これをアンプで大出力駆動する、パワー・リニアリティー重視型である。このためアンプの出力が随分と無駄になる。私の使用しているスピーカー(ドライバー)は、変換効率が50%クラスに及び、かつこれをホーンで動作させてあり極めて高能率である。平均的なスピーカー・システムと比較しても優に20dB以上も高能率である。よって1/10から1/20以下のアンプの出力で十分である。このように小出力のアンプで構わないので、電源に思いっきり無駄三昧をすることができるというわけだ。しかし実は、高能率のスピーカーというものは、とても敏感で繊細でもある、能率の低いスピーカーだと聴こえない残留雑音やハムが完全に識別できる音量になってしまうのである。またアンプの素性を暴露する能力も敏感ゆえに長けている。このようなスピーカーを満足に鳴らすためには、回路も電源もシビアに追い込まなければならない。よって電源にも無駄を投入しないといけないことになる。しかしその無駄は、スピーカーの高能率で相殺され、アンプは高性能になり最終的にはシステムのグレードは確実に高いものになる。 |
内部の様子。シャーシのジオメトリは、400X250X60ミリ、板厚は1.2tである。電源トランスのくりぬき付近は、Lアングルで補強桟を渡してある。シャシーのリベット部分も、さらにブラインド・リベットを打って補強してある。それでもこの重量に1.2tの軟アルミ板厚では、簡単にたわんでしまう。後で底面、側面と上面が一体となった箱型構造ケースにこのシャーシーが収納された状態で、標準的な強度が実現される予定である。内部は、回路を変更しやすくするためにがらんどうで単純にであるが、実装は結構骨が折れる。シャーシー上側はすべてトランスで埋め尽くされているので、ビスを立てる場所にも窮する。SOLENの47uは、直径が約60ミリあり、シャーシーの深さとほぼ同じで、うまい固定方法がない。耐久レース用のバイクの極厚チューブを輪切りにして固定している。グランドの配線は、アンプ本体と離れているのでとても難しい。全部のグランドのポイントから線を引き出し、アンプ本体側の一点アースまでもっていければ明快なのだが、収まりが悪すぎる。今回は、電流のループを検討、各段のデカップリングを信じて、電源部内に安易な一点アースを作り、ここからとりあえずアンプ本体のアース点まで引くことにした。DC/AC的なループと結合を考慮してあとで修正することにする。実はこのアンプ単体では配線を最終決定できない。というのは、当方の電源系は多段にノイズ・カット・トランスがツリー状に入っており、各機器がアイソレーションされており、かつスピーカーのフィールド電源が3系統あり、これが交流的な結合を持つので、システム全体を考慮しないといけないためだ。 |
標準電源的使用法 |
シングル・アンプは、概してPPアンプより音の素性を率直に出す。出力管、電源、部品の音の違いを大きく反映する。このクラスの電源をひとつ作っておくと、さまざまな回路方式や部品の評価に便利である。電源の影響を受けにくい回路構成をとったアンプでも、この電源に接続すると、いままで聴こえてこなかった音が聴こえてくる。またもとの電源に戻して聴きなおすと、たしかにその音の片鱗があることがかすかにわかる。しかしその音は、音の澱みのなかに埋没しがちで、我々の聴覚の検知レベルに到達しないのがわかる。アンプが出来上がる前に、この電源を使用すると音決めに役立つ。
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2A3PPアンプ |
この電源を評価するために使用したものは、ごく普通のムラード型の回路構成の2A3PPアンプである。プシュプル回路は、電源の影響を受けにくい構成をとりやすいので、電源の設計が楽である。この電源の影響が少ないはずの回路ででも、電源に手を加えれば加えるほどに今迄に聴こえてこなかった音が識別できるようになってくる。今回もこの電源の整流をシリコンと整流管の二通りを試してみた。電源の大きなL成分と電流特性を考慮してみるとその差は極めて少ないはずなのだが、我々の耳はその差を容易に識別してしまう。とにかく音の静けさが違ってしまう。アンプ部は別の項で記載するので、ここには、その概要のみをまとめる。初段6922パラのセルフバイアス、二段目は6CG7(RCAのセンターシールド)セルフ・バイアス、終段は2A3(RCAのダブルプレート、ノン・ブラック)プレート300V、固定バイアス-59V、AB1クラス動作でこの段のカプリングは、今のところ東一の銅箔フィルム・コンデンサを使用している。トランスは、OY-15-5Kとファインメット・コアのトランスをリモートで使用。ただ、回路はほとんど毎週変わっているので、一ヶ月と同じ回路で動いていない。前の回路方式のほうが良い結果であっても、回りを変更してしまってバランスをとってしまったので後戻りできないことがある。もうこれは泣くに泣けない。あの時の音よ戻ってきてくれと天に向かって祈っても戻ってこない。仕方がないので、それを上回る”はず”のシステムに挑戦していく。それにしても音はバランスである。最近は電解コンデンサの音が懐かしい。 |
下の写真は、この電源の元になった回路が木の板の上に空中配線された状態と、年中外科手術中で、内臓が上に露出した状態の2A3PPアンプ。何年もひっくり返った状態である。さすがに真空管を差し替えるときだけは、年に何回か上をむく。カッコ良く見えるシャーシーは、A3700IIのものであるが、カバーの背が低くそのままでは、2A3の頭がぶつかってグリルがつかないので、加工してある。こんなにキタナいアンプを組んではいけないといういう見本である。WEB中をずいぶんと見回したが、これほど醜悪な形相のアンプもまず、ない。写真に半分だけ写っているスピーカーはスペンドールのLS3/5A。その後には、WE755Aの入っている箱がある。下の黒い置き台は、クリプシュのラ・スカラで、低音のクリプシュ・ホーンの部分を愛嬌で使用している。 |
3/18/2004
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