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オルトフォンの世界

 

オルトフォンの魅力的な世界

 

私の常用のカートッリジはEMTで、もうこのかた20年以上も使用している。このカートリッジを使用し続けている理由は、とびぬけてよい音がするからという訳ではなく、常に安定して生産されつづけ、高価ではあるが入手可能であり、トーンポリシーが一貫しているという理由による。

 
 

EMTはオルトフォンに比べて音がいいかとう質問があるかと思うが、私が使用しているオルトフォンは、すでに20年以上前に生産を終了した、CG-25D、SPU-AE、MC-20 SuperIIなどであり、比較の話は、あまり現実的ではないかもしれない。あえてこたえるならば、趣味として音楽を楽しむ上では、オルトフォンのカートリッジのほうが好きである。確かに私は、EMTをリファレンスにしており、その精神性の高さとトーンポリシーの一貫性には、敬服させられる。OFD-25とまったく同じ構造のユニットのオルトフォンのCG-25Dは、確かに音に色づけがしてある。これはユニット単体を取り出して、アームに一体化されたシェル(私は、LINN ITTOKでかなり長く使っていた。)に取り付けてみると良く分かる。

CG-25Dの音は、Gシェルの鳴きとユニット背面とシェルの隙間を埋めるためのベークライト様の小片、そして針先を穴を通してカバーする黒いゴム状のダンパー材で造っている。この音は、たしかに再生音に何かを付加し、また出過ぎている何かを抑えているように聴こえるのだが、この音の造りかたがなんとも絶妙ですばらしい。音像は少し膨らみ、色づけがあるのだがそれが美しくかつまったく下品にならない、総じて高い音楽的バランスを作り出しており、すばらしいの一語に尽きる。

 
 

このような手法は、オルトフォン社の安い昇圧トランス、STM-72にも見られる。SPUシリーズと組み合わせたときのこのトランスの音楽のまとめ上げかたには絶句する。個々の音は、潰れており、繊細さも失っている。音に尾ひれがついている。シェルも鳴いている。トランスで歪んでいる。しかし音楽の伝えるべきエッセンスを見事に伝えてあまりある。これがバランスというものかと感嘆する。当然ながら、アームもRMG-212などを使用してバランスさせることが、必須の条件になるのはもちろんのことだ。

モノラルのユニットをAシェルに入れたCA-25Dは、このような音ではなくもっと厳格な、OFD的な音になり、アームもRF-297を使用することになる。さてCA-25DとCG-25Dのユニットは同じが違うかという議論が古来よりあるが、私自身どちらのユニットも外してLINN ITTOKのシェルにじか付けして使用していたが、真剣に比較試聴はしていない。理由は、まったく問題が発生しなかったからで、このことから、まあ同じものだろうと推論する。ただし、黒い四角いゴムのダンパーは、CA用とCG用で、変えているかもしれないと思う程度だ。私見では、ユニット自体の音は若干違うように思うが、これは個体差かもしれない。自分でダンパー交換もしたが、針のついた鉄芯の位置調整により、かなり音が変わる。固体差が発生する余地は、十分にある。

 
 

結論としてみると、私個人が音楽を楽しむ上では、EMTのOFD-25より、オルトフォンのCG-25Dのほうが、魅力的であると結論を下しておく。私は痩我慢で、突っ張ってOFD-25を使用している理由のひとつにCG-25Dで追い込んでいくと、再帰不能の"魔の境地"に入り込んでいく危険がある点も書き記しておこう。このことは、Western Electric 555 Receiver のところでとりあげよう。

この他に、LINN ASAKというステレオ用カートリッジも使用している。このカートリッジは、トレース能力が高く、細かい音を実によく拾い上げる。それでいて、中音域の厚みがあり彫りと深い陰影をも表現するすばらしいカートリッジで、EMTのTSD-15はこの魅力に完敗する。でもこのLINNの音作りに、ふっとやりすぎ感というか、わざとらしさを感じることがある。ASAKを妙齢の美人にたとえるならば、TSD-15は薫風に純白の制服がすがすがしい"凛とした"海軍の青年仕官といったところだろうか。

 
  また、オルトフォンのSPUゴールドなどもTSD-15よりワイドレンジできれいに澄み切った、広がりのある音がする。TSD-15は、このカートリッジにも魅力の点で負けてしまう。  

でもEMTの凄さというのは、その時々でいろいろな方向に好みが変わる人間の浮気っぽさに対して、ふと我にかえる気にさせ。今この音が気に入っているのだが、ほれこんでいるのだが、どっちに走っているのだろうと思って、じゃあEMTではどうだったかなと、正気に帰るために聴くのにやっぱり必要なものだろうというところだ。何よりやはり音が立っているのがよい。

 
1/5/2004