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HOBBY HP (A)
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吟醸電源

電源にまとわりつくノイズを退治する話

  現代に適したアンプ回路  

古い時代に設計されたアンプの回路を見ると、そのシンプルさに驚く。現代では、このような回路では、電源の影響で、音質の劣化が著しいだろう。私は、昔の回路設計が悪いとは思わない、むしろ現代の設計が見習うべきところも多いのではと思っている。私が申し上げているのは、おそらくは、20年前、さらにもっと以前は、オーディオ装置は、同じ装置であっても、もっといい音で鳴っていたに違いないということだ。

これは、AC電源の品質による。現代の家庭用の100Vの電源は、あまりにノイズで汚染されているのだ。特にディジタル装置から発せられるノイズの凄まじさには、おそろしいものがある。ACに乗った高周波のノイズは、電源トランスを貫通し、信号経路に混入し、混変調を発生させ、ひずみの元凶となる。電源雑音による音の違いは、システムのグレードが上がると顕著になる。時間帯により、音質に大きな違いがあるというのは、AC電源品質が時間により変わることが、音に反映しているということであり、システムのグレードがかなり高いという証拠でもある。

 
  真空管アンプがブームであるが、多くは古い時代の回路が基本になっている。これらの回路は、昔、AC電源が”清流”だったころに考案されたもので、当時は、問題なく優れたものだったが、現代の電源事情では、十分な性能を発揮できない。反面、現代に設計された、アンプでは現代の電源事情下で設計されてあり、電源の影響を考慮した回路化が成されている。そのため、昔の名器が、ソリッド・ステートのアンプの音に及ばないこともあり得るのだ。  
  AC電源の影響を受けにくいアンプ
 

私の製作した大星夜級のアンプでは、電源に重点を置いている。2A3PPアンプのB電源は、6段のパイ型フィルターで、高圧から、チョーク・インプット経由で所望のB電圧まで落としており、AC電源の影響を受けにくくなっているので、時間による音の違いは少ない。当初パイ型フィルターの段数と次第に増やしていったが、増やせば増やすほど、音質の向上がみられた。まるで、吟醸酒を造るために、精米歩合を上げて、米の外側を削って、糠としてどんどん捨てていくようなものである。4段までやった段階で、かなり良くなったが、夜9時近辺の時間帯では、やはり音質が劣化する。2003年12月の段階では、総段数6段、最終の3段は、左右独立になっている。当然電解コンデンサーは使用していない。このアンプの詳細は、別のところで述べることにする。(2003年12月に7段に変更、音質の向上より、バランスの取り直しの目的での変更)

 
  アンプの内側で、このような電源対策をしたが、これ以上段数を増やすよりは、AC電源側に、ノイズ・カット・トランスを入れて、アンプに入る前の対策を加えてはどうかと考えた。アンプの回路的には、真空管からは定電流に近いかたちに電源が見えているはずなので、ノイズ・カット・トランスを入れても飛躍的に良くはならないだろうと考えていた。下の写真は、ユニオン電機さんの 100V : 100V 500VAのノイズ・トランス。一次と二次が上下に別々に巻いてある。2000VAのものも購入したが、やはり容量には、重たいが、余裕があったほうが良い。
 
 
 
 

ところが、予想以上に大星夜性が向上したのである。回路理論の予測以上の音質の向上があったのだ、そこで徹底的にやるタイプの私は、ノイズ・トランスをもう一個作って、2段の構成にしてみた。結果は、驚くことにさらに大星夜性が向上したのである。ただし、私のメインアンプのほうは、それなりに追い込んであるので、バランスが若干崩れ、繊細な音にはなっていったが、音が弱くなるきらいが出てきた。ノイズ・トランスを使用する場合は、それを入れることを前提にした、システム・バランスを取る必要があるだろう。

 
 
古典回路とノイズ・トランス
 
  昔のウエスタン・エレクトリックのアンプや、その回路を元に設計されたアンプを使用している方も多いと思うが、これらの回路は、電源にノイズが少なかった時代の設計なので、現代の環境では、その実力を発揮していないだろうと思われる。現代の電源事情を考慮した、回路の設計が必要である。まずは、ノイズ・カット・トランスを(一段でよい)入れてみよう。電源は、清流でなければならない。  
  2006年現在では、電鍵精機社、ユニオン電機社、サウンド社、ライン・ノイズ・フィルターなど、その他自作のものまで含めて十種類ものノイズ・フィルタリング機器を使用している。但し、あまり多段にフィルタリングをすると音が弱くなることもあるし、雑音も音としての役割があるので、本HPの音の謎のコラムも参照して戴きたい。  
 
12/27/2003 (3/3/2006 改訂)