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ルミエール・ワン カートリッジ

ノイマン DST/DST-62 を範とした優れた素性の逸品

 

ノイマン DSTを範とする

 
  DST/DST62 は、カッティング・マシンに二個だけ付属してくる、ラッカー盤検聴用のカートリッジであるが、長年にわたって購入するか否かで迷っていた代物である。価格が高いというのも問題なのだが、その扱いにくさとレコードが減らないことは理解しているものの、その重針圧には、精神的にもつらいものがある。2004年に大森の菊池さんが遂に、ルミエール・ワンというDST方式のカートリッジの試作を成功させたときには、さっそくお邪魔して試聴させて頂いた。当時の製作所の現場は、SPがたいへんなボロで(失礼)、メインアンプもヨレヨレの状態(ゴメンナサイ)のものであったが、ひとたび針を下ろすと、そのヨレアンプとボロスピーカーを貫通して、凄まじいばかりの再現力が伝わってきた。製作の第一ロットを即座に注文した。  
  2006年の今では、拙宅の標準カートリッジとなっている。しかし使用には、十二分の注意が必要である。まずは、カートリッジ自体がまるごと強力なマグネットになっているので、ピンセットやドライバーなどは、ガチーンとひきつけられてしまう。ターン・テーブルなども周囲に鉄やステンレスが使用されていると、カートリッジごと吸着してしまうので、ひきつけられないように気をつけなければならない。  
  トランスのインピーダンス・マッチングも、非常にシビアである。私はJSの1.5オーム対40Kという超高昇圧比の特殊トランスで好結果を得ている。3オーム程度のとにかく一次が低インピーダンスのトランスを使用しなければならない。あとは、ノイマンのBV-33がよくマッチする。BV-33というのは、不思議なトランスで、あまりインピーダンスを気にせずとも広範囲のカートリッジにマッチするようだ。  
  抜群の情報量  
  カートリッジの世界は、音色などの好みがいろいろと分かれるが、DSTをはじめとする検聴用のカートリッジは、このような好みの議論が無用である。このカートリッジで聴こえた音が、他のカートリッジでは拾えていない。それでおしまいである。音の溝に入っているものを拾い出せるか否かだけで勝敗が決してしまうのである。この一本と他の数千本のカートリッジは一線を画す。但し、トランスのマッチングだけは十分留意しなければならない。トランスをミスマッチすると本来の性能を発揮するのは難しい。きちんとマッチすれば、背筋がゾクゾクするような彫りの深い、濃く、そしてとてつもなく乾いて速い音が貫通してくる。まさにリファレンスだ。調整もシビアだが、これ以外のカートを使う気にさせないほどの力を持っているので、チューニングしきって使えばよい。DSTほど気難しくないので常用できる。  

  ラッカー盤やメタルマスタの音を聴いたことのある人は少ないと思うが、一般のカートリッジでかけても、ラッカーやメタルマスタは、凄まじい情報量と音がする。このカートリッジで、普通のレコードをかけると、このラッカー盤やメタルマスタを聴いているような音がする。レーシング・マシンである。薄絹をかけたようなあるいはまったりとした音を好む方には、あまりに写実的すぎるかも知れないが、あるがままの姿というものは概してそのようなものだろう。  
 
3/3/2006