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RCA MI-1483A ネットワーク

RCAがWestern Electricに挑んだMIシリーズのネットワーク

  ウエスタン対RCA  

映画は人々の娯楽の主流だった時代、映画産業とその設備装置には最先端の技術が投入された。ベル研究所で開発され、ウエスタン・エレクトリックで製造されたシステムはその王者の地位に君臨したが、これに果敢に挑戦するものも現れた。そのひとつに名門RCAがある。ウエスタン・エレクトリックは、フレッチャー・システムのノウハウを投入した594Aドライバーを使用したシステムを旗艦としていたが、これに対抗すべくRCAは、フェノリック振動版を用いたMI-1443ドライバーを開発し594Aに挑んだ。RCAはMI-1443フィールド・ドライバーとペア組みするために、MI-1444ウーファーも開発し敢然とウエスタン・エレクトリックの牙城に挑んだ。

 

先端技術の特許戦

 
 

ベル研究所はコンプレッション・ドライバーに関係する多くの基本特許を有していた。しかしながらコーン型のウーファーを作るための特許は、GE(General Electric)が押さえていたため、ウエスタン・エレクトリックではウーファーの供給は、JensenからOEMで受けていた。RCAは親会社GEの持つ特許をフルに利用できたためフィールド型のMI-1444型15インチ(38センチ)ウーファーを開発できた。そしてMI-1443型ドライバーと組み合わせたシステムを構築した。このシステムに使用されたのが下の劇場用のネットワークである。

 

超怒級RCA劇場用ネットワーク

 
  ネットワークは巨大な鉄製の箱に納められていっる。左側が高さ46センチ、幅38センチ、奥行21センチのネットワーク本体で、右側がMI-1443ドライバーのレベル調整用のインダクタ型のアッテネータである。重量はざっと25キロ以上はあり、やすやすとは持ち上がらない。ネットワークの回路は、実に興味深い構成で、今日では考えられないような回路だった。下の写真は、この箱の中身であるが、部品は2種類4個だけである。左上と右下がキャパシタで、右上と左下が空芯コイルである。空芯コイルだけでも1個が4キロ以上、10mHという規格である。後ろに見える配線用のケーブルの太さは直径2センチ近くのものだ。ウエスタン・エレクトリックに対抗しようというRCAの気合が伝わってくる。  
 
 
  遠き先端技術の闘いのロマンへ  

ウエスタンとRCAのシステムとしての戦いは、実際になき合わせ試聴会が行われ、音の良さとしてはRCAが勝ったという話を聞くことがある。もしこれが事実ならば、これはWEが594Aドライバーを持ちながらも、これとマッチンングできるウーファーを開発しなかったことによるウエスタンの不利と、MI-1443ドライバードライバーで劣勢のRCA は、自社で優秀なMI-1444ウーファーを開発し超怒級のネットワークとともにトータルなシステム性能で辛勝したのではないかと推測する。事実は遠い歴史のかなたに茫洋としており、当時を偲べば先端技術のロマンの世界にトリップする。

ウエスタンとRCA
そのようなわけで、ドライバーはウエスタン、ウーファーはRCAが優位となれば、当時の仇敵同士を一緒にしてシステムを組んだらどうなるだろうかという話になる。どちらも還暦を優に過ぎてしかるべく陶冶熟成されているので、なかなかのシステムになるやも知れない。このところのメインシステムは、RCA MI-1444とWestern Electric 594Aドライバーとなっている。ただしネットワークは、近代的な設計にする。
  覚悟  
 

この記事をご覧になって、MI-1444を使用したシステムを作ろうという方がいらっしゃるかもしれないが、相当の勇気と覚悟をもって取り組まねばならないと付言しておこう。私自身もライフワークとして考えているくらいだ。まずこのウーファーは、フィールド・コイルに流す電流量とフィールド電源の質(回路方式や使用部品)によって、スピーカーの特性自体が変わってしまう。音質の変化も著しい。メーカーの標準の規格は、115Vの210mAだが、これは聴感上のベストポイントではない。ベスト・ポイントを探してフィールドの電流を変更していくと、スピーカーの特性が変化し、ネットワーク定数が変わり、ネットワークは作りなおしになる。このネットワークもたいへんな騒ぎで、スピーカーのボイスコイルのインピーダンスが30オームと高いので、必要となるコイルのインダクタンスは、かなり大きなものとなる。普段8オームのウーファーをお使いのかたは、計算してみるとわかるが、30÷8=3.75と約4倍の大きさのインダクタが必要となる。このインダクタは、銅線をグルグルと巻いてあるので、8オームのウーファーの場合の1.94倍の直流抵抗を持つことになる。この直流抵抗は、当然音質を劇的に劣化させる。よって、普通のネットワークを使用する限りでは、8オームのウーファーのほうが音質的に有利なことは当然だ。30オームのウーファーを使用してその性能を引き出すには、直流抵抗のかなり低いネットワーク・コイルを使用しなければならない。このネットワークに使用している空芯コイルも自重4キロ以上だが、私の使用状況ではまったく役不足だ。現在30オームを2個並列に接続して15オームのインピーダンスで使用しているが、まだまだもたついている。実際上は、4発を並列にして7.5オームくらいにしないと本来の力は出せないと思う。18インチ(46センチ)径の4181ならば、2本でいけるのではないかと思うがどうだろうか?私としては、もう退却はできないのでいずれ4発にするか、4181を2本につもりでいる。とにかくこの30オームというインピーダンスは扱いにくい。

 
 
11/28/2004
 
  MI-1444 と同じ規格のウーファーにMI-1432Aがあります.MI-1432Aのほうは,フィールド電圧が13Vになっています.このMI-1483-Aネットワームは,システムをマルチ・チャンネル化しましたので嫁入りしました.(9/10/2007)