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LINN ASAK カートリッジ

よく作られた優れた逸品

 

実は国産?

 
  ヨーロッパの音を好む方は多く、これらの人 は、米国、とくに西海岸方面の音を嫌う傾向があるかも知れない。この気持ちはとてもよくわかる。ヨーロッパは、文化の中に音楽が浸透しているその深さと日常性が並みではない。あらゆる音の情報を掘り起こして聞かせるというスタンスや、映画館や劇場で2時間から3時間の間、聴衆を感動の坩堝に置こうというものとは明らかに異なるだろう。  
  LP-12を世に送り出した頃のLINN社は、さすがに心得ている。しっかりとしたトーンポリシーをもって、音楽の輪郭をきっちりと聴かせてくれる。70年代に日本のオーディオに対して、"LINN HiFi"というメッセージを提示し、音楽を聴く上でのハイファイとはどういうものであるかを示した同社の見識には、素晴らしいものがある。日本のオーディオに対してある面批判的だった同社が、ことカートリッジとアームに関しては、当時日本のメーカーに受託生産を依頼していたことを知る人は、少なくないはずだ。その意味では、わが国の70年代から80年代頃迄のオーディオというものは、かなりの水準にあったと懐かしくも推察できる。  
  これは、初期のLINN の名品ASAK カートリッジだが、私のセカンド・カートリッジとして、LP-12で使用していたものであるが、当時のメインは、EMT TSD15/OFD25であった。非常に高い分解能を持ちつつ、中音域は音の厚みと充実感にあふれ、精妙な音のニュアンスをうまく表現する、なかなかに聴かせてくれた。このカートリッジに比べるとEMTは朴訥とした感がある。モニターとかレファレンス用途ではなく、音楽を愉しむ向きには、EMTに優るのではないだろうか。思い出深いが、さすがに古い製品で2004年で引退している。S社長の弁では、F1レーサーに10年前のタイヤを履かしてはいけませんとのご教示であった。さすが名言ではあるが、10余年前のF1レーサーも現代にビンテージとして残るものは少ない。性能もさることながら、神話と伝承、そして血脈のようなものが必要なのかも知れない。これはとても良いカートリッジだった。

 

 
3/3/2006